未来は突然やってくる

20XX年の未来予想

無人農業 (3) バーチャル空間で開発する

無人農業 (3) バーチャル空間で開発する


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前回は植物工場について取り上げましたが、今回は再び(1)の屋外で行う農業を考察したいと思います。

まず、抑えて起きたい点は植物工場が全ての作物を育てられるようになるには照明(ランプ)の技術革新が起きるか、電気が無料に近くならない限りは実現しないので、依然として未来の世界でも屋外での農業が続くと予想されます。(面積の問題が残りますが、もしかすると10%くらいは植物工場に移行するかも知れません)

屋外の無人農業の仕組みは(1)で紹介しました。

まだ読んでいない方は読んで頂くとして、今回は、どのようにして無人農業のシステムを「開発」するのかについて説明します。

屋外での無人農業は、AI制御による無人の農業機械、農業用のロボット、ドローン、タブレット端末、全てを管理するソフトウェアをワンセットで運用することで実現します。

ロボットを畑で動かすといったことは、今の技術では難しいですが、開発しなければ永遠に無人農業は実現しません。


開発の方向性は主に2つ。


1つめは従来型の開発手法

ロボット(ハード)とソフトウェアを作り上げて改良していく方法。

設計→実験→改良を繰り返すという開発アプローチになります。

このやり方は、他の製品でも共通点が多くイメージがし易いのではないでしょうか?


今回、詳しく紹介したいのは2つめの

バーチャル空間での開発


バーチャル空間(3Dシミュレーター・仮想空間)を作り上げて、その中でAIのロボット(CGで描かれた)が農作業を行うというものです。

つまり、現実世界と「そっくりに」作り上げたバーチャル空間の中でロボットを動かし、ソフトウェアやAIを開発するというアプローチです。



この動画は「Farming Simulator」という農場経営シミュレーションゲームですが、バーチャル空間での開発は、こういったCG空間の中で行われます。

実際に本物のロボットから詳細なデータを取って重量、バランス、形、動作の細かい所まで忠実に再現します。

他には、畑の形状や、土壌の質、湿り具合、日光の当たり方、天候、季節、風、雨、作物の成長の仕方など、様々な状況を実際にデータを取ったり、物理法則などを計算にいれて限りなく現実に近いバーチャル空間を作り上げます。


このようなアプローチで無人農業が実現すると思える根拠は、農地には何もなく、複雑な条件が殆ど無いからです。

農業というは、とっくの昔に解明されている分野なので、現在の私たちは農業自体の研究を一切せずに、詳細なデータを取る作業だけで済むのです。(時間はかかりますが難易度は低い)

バーチャル空間の「作られた世界」の中を動き回るのはAIの農業用ロボットになるのですが、バーチャルなので物理的には実在しません。


もし、画面で見るとすれば、それはコンピューターゲームのようにCGとして描かれるでしょう。

当然、AIなので与えられた条件の中で、無限に試行を繰り返し、人間には思いつかない最適な動作パターンを見つけ出します。

また、バーチャル空間で動き回るロボットの数は1台だけではありません。

10台でも100台でも、どのような条件であってもAIが成長し、最適な動作パターンを見つけ出すでしょう。

もちろん、厳密にはCGで作られたバーチャル空間と、現実世界は異なっているので、いくらバーチャル空間でAIを成長させても、現実世界で活用できないようであれば、開発しても、あまり意味がないように思えます。

しかし、

ドローンによる空からの撮影と農業用ロボットによる画像・空間認識で得られたデータを用いてバーチャル空間をリアルタイムで「生成」することが出来れば、


ロボットが現実世界を動き回るのも、バーチャル空間内で動き回るのも、AIにとっては「同じ」ことになる。



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仮にバーチャル空間を生成する精度が100%ではなくても、実際に複数台のロボットが動いた時には沢山のカメラで情報を取得するので、ある程度は補えるでしょう。

未来の世界では、現実世界を動き回るドローンやロボットが、得た情報を元に「バーチャル空間を生成」するのは決して不可能ではないと考えられます。

「バーチャル空間の生成」といっても様々なアプローチがあるので、言葉でいくら説明しても、実際には何のことなのか分かりません。

一つの方法としては

(素人による思い付きなので根拠はないですが)

あらかじめ人が元になるオブジェクトを用意しておくというものです。

作物の成長具合を種類ごとに100パターン作っておき、その3DCGのオブジェクトをブロックを組み立てるようにAIが扱います。(オブジェクトの選択→組立)

ドローンが空からの撮影で地図を作り、農業用ロボットが画像・空間認識で捉えた情報をもとに用意さているオブジェクトの中から似たようなものを探し出して(選択)、ブロックを組み立てるようにバーチャル空間を生成します。(バーチャル空間と現実世界は異なるので、リアルタイムで補正をかける必要がありますが)

現実世界でロボットが動き回りながら、リアルタイムでブロックを組み立てるようにして生成したバーチャル空間は、別の場所でAIを成長させるために作られたデスク上のコンピューター内のバーチャル空間と殆ど「同じ」ように扱えるのではないか?というのが「バーチャル空間を利用した開発」の最も重要な部分になります。


つまり、

研究室のバーチャル空間の中で成長させたAIの能力を、すぐに現実世界のロボットに反映することが出来るようになるのです。


農地は平面なので,、「組み立てる」というよりはオブジェクトを「配置」するといった方が表現としては相応しいかも知れません。

研究室のコンピューター内のバーチャル空間で成長させたAIの能力を、すぐに現実世界のロボットに反映させることが出来るようになると、今までは動作が遅くて、あまり役に立たなかったロボットが本当の意味で「使える」ようになる筈ですから、工場、倉庫、農業、公共施設などでは一気に普及する事になると予想しています。


スーパーコンピューターを活用するとどうなるか?

バーチャル空間で開発する事に関して、とてつもない可能性があると感じる点は、これらの、本来であれば時間のかかる開発をスーパーコンピューターを活用することでバーチャル空間内で時間を早回しにすることが出来ることです。

驚異的な速さでAIが成長していく可能性があります。


「バーチャル空間での開発」「AIの成長」にスーパーコンピューターの能力をフルに活用すれば、もしかするとシンギュラリティに近い世界というのは、想像しているよりも早く訪れるのではないか?と考える人がいるかも知れません。 私も上手く行けば20年後くらいに実現するのでは?と一瞬、思いました。

しかし、冷静になって考えてみるとシンギュラリティの世界は現時点では殆どSFと同じなので、20~30年以内に実現出来ると断言するのは、やはり難しいと感じます。(数100年単位でみれば実現するかも知れませんが)

技術の加速によってシンギュラリティが実現するのか、しないのか、また、実現までの期間が短縮されるのかは今の時点では分かりません。確かに、ある程度は早まる可能性は高いでしょう。ですが、シンギュラリティというのは、まだまだ先の先の世界の話なので、あまり考えても仕方がないのです。


シンギュラリティは一旦置いておくとして、スーパーコンピューターとAI・ロボットの組わせは相性が良いので、上手く活用出来れば、

近い将来、ロボット社会が実現されるでしょう。

私はAI・自動運転車・ロボットが普及しないと「次の時代」がやって来ないと考えています。それらを支えるのが高速通信網(5G)やスーパーコンピューター・各種デバイスになります。その中でもスーパーコンピューターの活用次第で世の中が大きく変わる可能性があると期待しています。

バーチャル空間での開発(AIの成長)をスーパーコンピューターで行うことによって、とてつもない世界が実現される。

※開発期間を100分の1くらいに短縮することが出来るかもしれません。


もちろん現実のロボット(ハード)の改良も平行して行わないといけないので、簡単にはいかないですが、バーチャル空間でのシミュレーションという方法を用いることで

「未来の世界」ではロボットに限定されず、あらゆる製品の開発や研究の期間が大幅に短縮されるでしょう。


今回、紹介した方式は方向性を示すための大雑把なイメージに過ぎないので、実際には別の方式によって「バーチャル空間での開発」が実現すると思います。

※従来のロボットではネックになっていたバッテリーの問題。つまり駆動時間が短いことですが、将来、「リチウム空気電池」が普及すると改善される見込みです。 (補助でソーラーパネルを付ける方法もあります)

このような様々なプラスの要素を考慮すると、無人農業が実現するハードルはそれほど高くはないと思います。