人間そっくりのロボット
人間そっくりのロボット
前回の「受付ロボット」の続きです。
今回は、受付や案内の仕事に対応する「人間そっくりのロボット」を取り上げます。
皆さんも、ニュースなどで知っていると思いますが、人間そっくりなロボットの、リアルな造形や表情などに驚かされないでしょうか。
私は、このタイプのロボットには、大きな可能性があると考えています。
それは、
ロボットの造形が人間の見た目に近ければ、脳が勝手に「人間である」と認識してしまう点にあるからです。
ロボットなのに、人間だと「認識」させることが、このタイプのロボットの最も重要な要素だと思います。
将来、私たちは人間そっくりのロボットに対して、
人間と同じように接するようになります。
ロボットだと知りながら、脳が無意識レベルで「人間である」と勝手に認識してしまう訳ですから、 どうしても人と同じような扱いをしなければなりません。
もし、見た目が冷酷で凶暴そうな、金属製のヒト型ロボットであった場合、私たちはロボットに対して、恐怖を感じてしまい、人と同じように接することが出来るとは思えません。
ロボットの見た目が可愛かったり、作業用の2足歩行ロボットのような、無駄のない洗練されたロボットのデザインであれば、不快にならずに済みますが、そうでなければ、必ず、気に入らないといった理由で
ロボットに対して暴力を振るう人間が現れる筈です。
危害を加えたとしても、ロボットのカメラで録画されていますので問題はないですが・・・。
そのような、ロボットに対する接し方、扱いの問題を上手く解決しているのが、前回、紹介した愛着を持てるタイプの受付ロボットです。
一方、人間そっくりのロボットはリアリティを追求し、より「人間らしくなる」ことによって、認識の問題を解決しています。
将来的には、現在よりも、さらにリアルな造形や動作、高度なAIに発展していくと思います。
活躍の場は、主に受付、案内業務など多くの人と接する仕事になるでしょう。
未来の世界では、倉庫や工場でデュアルアームロボットや2足歩行型ロボットが活躍しますが、人間そっくりのロボットは製造業の現場で荷物を持つわけではなく、人と接する仕事を行います。
このタイプの人間そっくりのロボットは、2足歩行には進化せず、動き回らなくて済む、受付・案内業務に特化する方向で発展していきます。
しかし、普通は人が働いているのが当然だと考えられていた受付・案内業務がロボットによって代替されると、まるで人間が不要になったかのように感じて不安になる人もいるかと思いますが、こうした無人化への流れは、決してデメリットばかりではありません。
ロボットを導入することのメリット
働いているのが人間の場合は
○台風や洪水、激しい雷雨の日に出勤するのは大変で、怪我をしたり事故に遭う心配もあります。
○体調不良で早退したり、病気や用事で休むこともあります。
○業務でミスをしたり、労働意欲の低下も起こりえます。(チームワークが要求されるタイプの業種ではないので本人の頑張りが仕事仲間のモチベーションを上げるということも殆どないと思われます)
○長期間にわたって労働者のモチベーションが保てるのかといった意欲の問題
○「つまらない」「疲れる」「転職したい」「労働時間が…」「収入が…」といった理由で退職してしまう
○雇用側が労働環境、勤務時間、給料などを改善しないこと。
○仕事がなくなった場合、容赦なく労働者を解雇する必要があること 。
ロボットを導入することで、こういった根本の問題に対応することが出来ます。
SF映画に登場するようなロボットになるのは遠い未来の話です。
SF映画では人間と見分けがつかないロボットが動き回ったりしますが、そういったフィクションで起こることは、すぐには実現しないと考えています。
もしかすると、未来の世界で、現在の常識を覆すような技術革命が何度も起これば、人間そっくりのロボットが街中を歩き回ることも有り得るでしょう。
しかし、それは「バッテリーの技術革命」や「ナノテクノロジーを応用したモーターの小型化」「電気信号で制御された人工筋肉の発明」といった未来の技術が実現しない限り難しいと思います。
そのことを理解しておけば、受付・案内業務に特化して開発し、普及させることは十分可能です。
受付ロボットは「可愛いタイプ」と「人間そっくり型」の2つのタイプが主流になるでしょう。
もう一つ、考えておきたいことは
導入のしやすさについて
ロボットではありませんが、CG(コンピューターグラフィックス)は導入コストの点で優れいるので、導入のしやすさから普及する可能性が高いと思われます。
将来は画面上にCGによって描かれた人物と話す機会が増えるでしょう。
(CGを使わずテキスト+音声といった組み合わせも考えられます)
しかし、CGには導入コストを抑えられる以外に優れた点は少なく、人を惹き付ける力があるとは思えません。
CGが大胆に使われ始めたのが1993年のハリウッド映画「ジュラシック・パーク」からなのですが、現在、CGの登場から既に約25年ほど経っていることを考えてみて下さい。
1993年、私たちは映像作品の中でリアルに動くCGを初めて見ることが出来ました。
そして1994年には家庭用ゲーム機の「プレイステーション」が発売。
映画のような映像作品としてではなく、当時、多くの人々が生活の中で本格的なCGに触れたのは、プレイステーションやパソコンゲームなどが初めてではないでしょうか?
つまり、何が言いたいかというと
25年前には
CGは、とてつもない驚きを与えてくれる表現だったのです。
しかし、CG自体は、25年前から多くの人々が体験しているので、現在では、まったく目新しさがありません。
どんなに高度な対話型のAIが搭載されてもCG自体には人を惹き付ける力は、
もう、ないのです。
(CGの活用が娯楽目的の映像作品やゲーム作品であれば別ですが)
人を「惹き付ける力」がないということは「集客力」を持たないことを意味しています。
人は新しい技術に触れた時の驚きや喜びを求めている
このことから、CGとロボットの特徴を考察すると
○ CGは導入コストを低く抑えられ普及が期待できるが、集客力は殆ど無い。
○ ロボットは導入コストでは不利な面がありますが、高い集客力を持つ。
となるでしょう。(現時点では)
導入コスト以外ではCGのことを褒める所がなかったのですが、実はCGには次の展開が用意されています。
未来の世界ではCGが
ホログラムに置き替わる可能性があります。
そうなると技術の「目新しさ」と、それなりの「低コスト」の2つが上手く両立するかも知れません。
ホログラムはロボットのように物理的に存在するわけではないので、実在感の面では劣りますが、それでも等身大の人物がホログラムで映し出されると、強烈なインパクトを与えることが出来るのは間違いないでしょう。
ちょうどCGとロボットの中間にホログラムがあるといった位置付けになると思います。