森林の消失 人間による破壊と森林火災
森林
温暖化の続きです。
前回は人間が排出したCO2(温室効果ガス)が「森林」「海」に吸収された後、再び大気に戻す仕組みのことを「炭素循環」と呼び、人間の活動が原因で温暖化が引き起こされる事を説明しました。
今回は、炭素循環と関係のある森林について取り上げたいと思います。
森林が失われている
森林はCO2の放出量より吸収量の方が若干上回っています。このため人間がCO2を排出しても海の吸収量と合わせて上手く地球のバランスを保ってくれています。
○ 森林の働き
光合成を行いCO2を吸収
植物は昼は光合成を行いCO2を吸収して酸素O2を多く出し、夜は二酸化炭素CO2を出しますが、全体としてCO2を少しだけ多めに吸収してくれます。
植物だけでなく
土壌が落ち葉や古くなった木を分解してCO2を放出
森林(植物)には、このような仕組みがありますが、現在は伐採などで森林が失われる傾向が続いているため、温暖化を抑える働きをする炭素循環の仕組みが崩れようとしています。
既に
毎年、約520万ヘクタールの森林が消失。
(2000年~2010年の平均)
520万ヘクタールの広さは九州と四国を足したくらいの面積に相当。
現在、マングローブ林の減少なども含めて多くの森林が失われているのです。
森林消失は人間が原因で引き起こされていると考えられています。
森林が失われる
火を使うようになってから現在に至るまで人間は徹底的に森林を破壊し続けてきました。
炭素循環にとって重要な要素である「森林」は、人間が火を使い、農耕が始まった頃から人為的な影響を受け続けて来たと言われています。
つまり、森林の消失は、ここ数十年単位ではなく、規模は小さいですが、人間が火を使うようになった約1万年~数千年前の大昔から行われていたのです。
1万年前としたのは農耕・畜産が始まった頃を基準にしたからです。
具体的には
○ 木を伐採し燃料として使う。
○ 材木、生活用品として利用。
○ 火を放って畑にしたり放牧を行う。
○ 森林を伐採した土地に道や家を作る。
このような形で何千年もかけて本来の森林の姿は人間の手によって一方的に変化させられ、失われていきました。
「植生」の話ですが、
人為的な影響を全く受けていない森林のことを「原生林」と呼びます。
(自然植生)
実は地球上の森林の多くが原生林ではなく、人間の影響を受けた後の森林であるのです。
「原生林」の他には、伐採や火を放った後、自然の力で再び樹木が育って森林が出来たものを「天然林」「自然林」と言います。(二次林)
林業など目的を持って人間が苗木を植えて作ったものは「人工林」になります。
つまり、私達が見ている森林(雑木林)の多くは、遥か大昔に人間の手によって影響を受け、姿を変えられた後の姿なのです。
ここで言う「人為的な影響を受ける」とはどういう事でしょうか?
「植物群落」「植生」という非常に難しい話ですが、「森林」が人為的な影響を受けると植物群落のバランスが崩れてしまい、本来あった森林の植生が変わってしまう事を言います。
当然、気候変動や様々な条件によって植物群落の構成は長い年月で少しずつ変化するのですが、人為的な影響を受けた場合、本来あった植生のバランスが短期間で崩れ、二度と同じ状態には戻らないのです。
それでも、本来の植生バランスが変わってしまったとしても森林が残っているだけ、まだ良い方でしょう。
何故なら
私たちが現在生きている世界は森林が失われた後の世界なのです。
気候変動によって長い年月をかけて森林が消滅していった場合も多くあるので一概には言えないのですが、普段から私たちが見ている景色は、畑などの農地、草原、放牧を繰り返した土地、岩肌がむき出しになった荒れ果てた土地、または建物や住居など、こういった全ての土地において大昔、森林だった可能性があるのです。
もちろん、元々、木があまり生えてない条件の土地、たとえば砂漠地帯などもあるので、全てが森林だった訳ではありません。
森林と温暖化について考えた時に、どうしても現在起こっている森林伐採を思い浮かべてしまいますが、実は人間が何千年も前から森林を破壊し続けてきた後の世界に、私たちは生きているのです。
また、現代社会では何千年前に比べて急激に人口が増加したため、食料生産を行う広大な農地が必要になっています。
当然、農作物は私たちの生存にとって無くてはならないものですが、しかし、かつて、その場所に森林があったのならば、もしかすると世界中にある広大な農地は地球の「炭素循環」のバランスを少しは崩す原因になっているかも知れません。
広大な農地は形を変えた「砂漠」である。
つまり、農業大国とは砂漠大国でもあるのです。
大昔から数千年単位で人間が行ってきた伐採と農耕・放牧によって多くの森林が失われましたが、私たちの時間の感覚では、その事を想像することは難しいのです。
そして、人口が増えた現在では森林破壊が急速に進んでしまいました。
気候変動
今後、地球が温暖化して気候変動が起きると言われています。
すべての地域がそうなる訳ではありませんが、今までとは変わって極端な気象になると予想されているのです。
○ 気温が上がる。
○ 降水量が増える。(洪水)
○ 干ばつ。
○ 台風が大型化する。
気候変動によって暖かい地域に寒波が到来しても、地球全体の温暖化によって北極の氷が溶ける傾向には歯止めがかからないでしょう。
寒波などによって一時的に寒くなる地域もあるのですが、全体で見ると必ず温暖化していく筈です。
<北極と大寒波の関係>
北極上空のジェット気流が蛇行することで暖かい地域に寒波がやってくる。
北極の上空には極渦と呼ばれる冷たい低気圧があって、(ポーラー・ボルテックス)その周りにはジェット気流が流れていますが、温暖化の影響によってジェット気流が蛇行すると、アメリカ、ヨーロッパなどに寒気が流れ込み、大寒波がやってくる現象が起きています。
北極からの寒気が流れ込むと、その地域では寒くなりますが、しかし、それは地球が寒冷化した訳ではなく、北極の温暖化が進行している証拠とも言えるのです。
森林火災
森林の場合、暑くなると火災が発生する確率が高くなると考えられます。
森林火災の発生の仕組み
○ 気温が上昇し、葉が擦れ合うことで火になり燃え広がる。
○ 他には「雷」によるものや人間が原因のものもあります。
火災だけが原因ではありませんが、2016年に消失した森林の面積はニュージーランドと同じだと言われています。
この動画のように自然現象として森林火災が起きても植物の中には、「再生」の機能が備わっているとも考えられるので、自然火災を「生態系の更新」もしくは「バランスを取るための維持機能」として捉えると決して悪い側面ばかりでは無いことが分かるでしょう。
しかし、現在、温暖化によって引き起こされた森林火災は規模が大きく、膨大な量のCO2を放出するため、さらに温暖化を進めてしまう悪循環が懸念されています。
2016年も森林火災は多かったですが
2017年の大規模な火災としては
1月 チリ
5月 ロシア
6月 ポルトガル、スペイン
7月 フランス
8月 カナダ(4月頃から頻発)とギリシャ
10月 アメリカ(北カリフォルニア)
2018年は
1月 オーストラリア
このように世界中で大規模な火災が頻発するようになってきました。